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紅白歌合戦は、「変化に適応しようとしない」日本社会の現象を象徴しています。このことは何度もエッセイに書いたので詳細は省きますが、終戦後に悲惨と絶望の中にあった日本国民を慰撫するために作られた番組でした。そのあと、しだいに高度成長を謳歌するという色彩が濃くなりましたが、それはそれで充分に存在価値はあったように思います。

1960年代半ば、テレビがほとんどの世帯に行き渡ったころ、紅白歌合戦は大晦日のハイライトで、子どもだったわたしにとって、本当に楽しみでした。現代との最大の違いは、ほとんどの出場歌手たちの歌を、家族全員がだいたい知っていたということでしょう。国民的ヒット曲というものがまだ確実に存在していたわけです。それは、国民が必要としたから存在していたわけで、現在は全国民的な一体感が失われているので、必要とはされていません。一体感どころか、富裕層と貧困層、若年層と中高年層、中央と地方、正社員と非正規社員などで、利害の対立がますます深まっています。紅白歌合戦は、その深刻な対立を隠蔽する機能のみを有するという番組になってしまいました。

村上龍 - JMM [Japan Mail Media] 2011年1月2日 No.669 Monday Edition
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